第3話
小さな変化の積み重ね
ベッドに横になって、天井の薄い汚れを眺めていた。昨夜と同じように、意識的に何もしない時間を作っている。体は疲れているのに、頭だけが冴えている感覚は相変わらずだ。でも昨夜と違う点がひとつある。焦りがない。
目が覚めるのは避けられないかもしれない。そう受け入れることにした。むしろ、夜中に目が覚めたときにどう対処するかが大事なんじゃないか。SNSのスレッドにそんな内容があった。
眠れない時は無理に寝ようとするな、という投稿。確かに、ここ数週間の自分は、目が覚めるたびにパニックに近い感覚に襲われていた。また起きてしまった、また明日疲れるんだ、そういう悪循環だった。
午前2時すぎ。案の定、目が覚めた。でも今夜は違う。ベッドから出て、リビングの薄暗い照明の下で本を読むことにした。スマホではなく。スマホの画面の光は、目覚めた脳をさらに起こしてしまうと、どこかで読んだ気がする。
40分ほど経った。眠気が戻ってきた。寝室に戻って、再びベッドに横になる。今度は比較的すぐに眠くなった気がする。
朝日で目が覚めたのは6時42分。昨日より5分遅い。些細な差だが、夜中に起きた後でも再び眠れたという事実が、妙に嬉しかった。
鏡を見る前に、自分の手を見ている。何か違うか。気のせいか。でも毎日、小さな変化を積み重ねれば、何か大きく変わるんじゃないか。そんな予感が、朝の支度を急かしていた。
仕事中、同僚に「最近調子良さそうだね」と言われた。自分では気付かない変化も、他人には見えるのかもしれない。帰り道、またSNSで睡眠について検索してしまう。もっと知りたい。もっと試したい。その衝動は、ここ数週間の悪循環からは考えられない、前向きなものだった。
続きはまもなく
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