月々の重さ

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第5話

二人の予算、一つの実験

翌日から、僕たちは小さな実験を始めた。

前月の「謎」の項目を眺めながら、妻と一緒に来月の予算を立てる。ただし普通の家計管理ではなく、五つのカテゴリーごとに「これなら納得できる額」を決めるという方法だ。

「生活」は揺るがない。光熱費、食費、医療。

「保険」も同じ。万が一のための貯蓄。

だが「成長」と「関係」と「謎」——この三つは、人によって、月によって変わる。妻は月々のオンライン講座に三千円。僕は雑誌と、ときどきの映画館。友人との食事会に充てる予備費。親への仕送り。

「謎」の欄には、無意識の買い物や、使う予定だったけれど結局使わなかったものが集まっていた。妻と話すうち、それらは実は「不安を和らげるための買い物」だったことに気づいた。疲れた日に、無駄かもしれないと思いながら買ってしまう缶コーヒー。セール品だからと手に取る日用品。

「これを減らすんじゃなくて」と妻が言った。「減らしたいのか、それとも理由を知りたいのか。そこを分ける方がいいんじゃない?」

僕はその言葉の重さを感じた。

来月の「謎」の予算を、敢えて少し多めに設定することにした。その代わり、何を買ったのか、なぜ買ったのかを手帳に書く。三ヶ月続けてみて、パターンが見えるかどうかを試してみるのだ。

夫婦で家計を眺めるのは、結局のところ、二人の人生の地図を描き直す作業なのだと思った。数字の背後にある、選択と迷いと、小さな譲歩の積み重ね。

給与明細は相変わらず同じ額だ。だが、その先にある「月々の重さ」の正体が、少しずつ見えてきた気がした。

続きはまもなく

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