第4話
問い直すということ
手帳に書き出した支出項目は、やがて一つのリストになった。
「生活」「成長」「関係」「保険」「謎」——五つのカテゴリーに分類してみると、それぞれの欄の充実度が一目瞭然だった。特に「謎」の欄に集まった項目の多さに、改めて気づかされた。
妻に見せると、彼女は黙ってそれを眺めていた。
「これ、一緒に考えてもいい?」
当たり前のような質問だったが、僕たちは普段、給与から生活費を引いた残りを「共有の財布」に入れ、それぞれが必要なものを引き出すという形をとっていた。お互いの細かい支出について、詳しく知らないまま時が経っていたのだ。
夜、リビングに二つ分の手帳を広げた。妻の支出も同じ五つに分類してみると、興味深いことに気づいた。僕の「謎」の欄と妻の「謎」の欄が、案外重なっていない。自分たちが何に引っかかっているのか、その違いさえ、明確には知らなかったのだ。
「あ、これ」と妻が指差した項目は、月々のサブスクリプション。彼女は「成長」だと思い込んでいたが、実は三ヶ月使っていなかった。僕が指差したのは、たまに買う趣味の雑誌。これは「謎」というより「保険」かもしれない、と妻は言った。
家計簿を眺めるのと、二人で向き合うのは違う。モヤモヤの正体が、単なる「無駄」ではなく、二人の人生設計のズレかもしれない、という考えが浮かんだ。
「来月、一緒に試してみない?」
妻が提案した。それは、毎月の支出を一度、二人で仕分け直す、という作業だった。理由を問い直し、本当に必要なものを選び直す。その過程の中で、自分たちが何を大事にしているのかが、より明確になるのではないか、という感覚を、僕たちは共有していた。
翌月が来るのが、少し楽しみだった。
続きはまもなく
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