第7話
第7話 揺らぎ
五日目の朝は、六時十五分に目が覚めた。
昨日より五分早い。田中はそれに気づきながらも、焦らず天井を見つめた。体の中で何かが整い始めているのだろう。朝日が薄く、カーテンの隙間から差し込んでいる。いい時間だ。
会社では、午前中に資料作成の締め切りが迫っていた。集中力を要する仕事だったが、眠気は来なかった。むしろ、頭がはっきりしている。ここ数日間、初めて感じる状態だ。昼食後も気力が保たれている。
鈴木が昼休みに席に来た。珍しいことだ。
「調子いいようだな」と、短く言った。
「ええ、最近は」と田中は答えた。
「続けるといい。ただし」鈴木は少し躊躇うような間を置いた。「一週間、二週間で満足するな。習慣ってのは、そう簡単には根付かない。揺り戻しが来る。その時に諦めるやつが多い」
帰宅後、田中はスマホを置く前に、ふと立ち止まった。四日間の改善は確かだ。だが、本当にこれが続くのだろうか。一週間後は。一ヶ月後は。
夜十時、いつものように寝室に向かった。ベッドに横たわると、昨晩までと違う感覚が押し寄せた。焦燥感だ。良くなっている実感と、それが失われるかもしれない不安が、同時に存在していた。
呼吸を整えようとしても、心は揺らいでいる。眠りは浅い。夜中に何度か目が覚めた。夜明けまでの距離は、まだ遠い。
続きはまもなく
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