第4話
習慣の重さ
体が軽い。その感覚は、朝食を食べるまで続いた。
鏡の前で歯を磨きながら、田中は自分の顔を見た。いつもより目がはっきりしている。クマが薄い。寝不足の顔ではない。たった一晩で、こんなに変わるものなのか。
会社に着いて、いつものように席に座った。午前中の会議は、珍しく最後まで集中できた。資料の内容が頭に入る。隣で居眠りをしている同僚を見ながら、自分との違いを感じた。
お昼。鈴木が声をかけた。
「どう?試してみた?」
「昨日から始めました。まだ一日ですが…」
田中は昨夜のことを話した。スマホを寝室から出したこと。最初は違和感があったが、眠気がきたこと。朝、目覚まし時計の前に起きたこと。
鈴木は笑った。「いいじゃん。でもね、ここからが大事なんだ。今日は良かった。明日も良いとは限らない。一週間、二週間と続けることで、体が変わっていく」
「そうなんですか」
「俺も最初の三日は調子良かったけど、四日目に戻ってしまった。その時が勝負だと思う。そこでやめるか、続けるか」
午後。疲れが少しずつ戻ってきた。三時を過ぎた頃、田中は眠気を感じた。いつもの眠気だ。それでも昨日よりは軽い気がする。
夜。田中は再びスマホを寝室の外に置いた。今夜も同じことをするのか。これが一週間続くのか。二週間。一ヶ月。
慣れた習慣を手放すことの重さを、改めて感じた。
ベッドに横になり、天井を眺める。昨夜と同じように、最初は違和感があった。でも、スマホを取りに行きたいという衝動は、昨夜ほど強くない。
鈴木の言葉が、頭の片隅にある。ここからが大事。四日目が勝負。
田中は深呼吸をした。夜明けまでの距離は、まだ長い。
続きはまもなく
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