夜明けまでの距離

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第3話

試行初日

その夜、田中は意識的に行動を変えてみた。

夜の10時。いつもはベッドに横になりながらスマホを握っている時間帯だ。今日は、そのスマホを寝室の外に置いた。リビングの充電器に挿したまま。

最初の15分は、違和感があった。手元に何もない。やることがない。目の前には天井だけがある。田中は左を向いたり右を向いたり、何度も寝返りを打った。

いつもはこの時間、SNSをスクロールしたり、ニュースアプリで記事を読んだり、何かしら画面を見ていた。それが習慣だった。15年間、毎晩同じことを繰り返してきた。

無意識に立ち上がって、スマホを取りに行こうとした。廊下の途中で足を止めた。これじゃダメだ。試してみるんなら、ちゃんとやらないと意味がない。

ベッドに戻った。10時20分。

暗い天井を眺めながら、田中は深呼吸をした。鈴木の言葉を思い出す。「最初は効果なくて、1週間くらいは相変わらずだったよ」。つまり、初日から劇的な変化は期待するなということか。

眠気が訪れるまで、ただ待つ。体を動かさず、息をして、時間が過ぎるのを感じる。こういう経験は、いつ以来だろう。

10時45分。田中は眠っていた。

朝。目覚まし時計が鳴る前に、田中は目を開けた。予定通り6時半。いつもより少し早い。いや、違う。いつもは目覚まし時計が何度も鳴ってから、ようやく起き上がる。

今日は違った。体が軽い。完全にそう感じたわけではないが、いつもの重さが、半減しているような気がした。

洗面所で顔を洗いながら、田中は考えた。一晩だけだ。たかが一晩。これで判断するのは早い。でも、この感覚は何だろう。

会社の階段を上りながら、彼は今夜も同じことをやってみようと決めていた。

続きはまもなく

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