第7話
欠陥のアルゴリズム
投資家の沈黙は、三十秒ほど続いた。長く感じた。
「完璧さだけでは息をしない」ディレクターが繰り返した。彼女の声に、わずかな確信が混ざっていた。「つまり、バグを機能として組み込むということですか」
「バグではなく」俺は画面を見た。昨夜テストしたキャラクターたちの顔が脳裏に浮かぶ。「設計された不完全性です。人間は矛盾を抱えながら生きている。AIがそれを学習するなら、完璧さの枠を壊す必要がある」
投資家の一人が身を引いた。「リスクが高い。市場投入前に、その『ゆらぎ』が予測不可能な行動を生むかもしれない」
その通りだ。俺も同じ不安を感じている。だが、昨夜のテスト結果は嘘をつかない。許容誤差を設けたキャラクターたちは、単なるテンプレートではなく、何かしら『ある』ものになっていた。
俺は、ディレクターと投資家たちの間を見渡した。
「確認したいことがあります」俺は立ち上がった。「このシステムの目的は、ユーザーが没入できるキャラクターを生成することですね。では、完璧なキャラクターと、欠陥を持つキャラクター。どちらが、より人間らしく感じられるか」
「それは」投資家が言葉を探った。「主観的な判断では」
「そうです。だからユーザーテストが必要です」俺は決めた。「完璧版と、ゆらぎを許す版。両方を同じ条件で試すんです」
ディレクターが頷いた。投資家たちは互いに視線を交わす。
部屋を出る際、俺は最後に言った。
「もし、欠陥のある方が、ユーザーの心を掴むなら——」
俺たちは何か根本的なものを見落としていたことになる。そして、その先に何があるのか、まだ誰も知らない。
続きはまもなく
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