第8話
第8話 朝8時の選択肢
月曜の朝。目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
ベッドの中で天井を見つめる。土日を挟んで、頭がリセットされている感覚がある。金曜朝の決意も、週末の間にどこかへ消えてしまったのではないか。そんな不安が、朝日の中で膨らんでいく。
キッチンに立つ。昨夜、また別のレシピを見ていた。今朝はそれを作ってみようと思う。
水を注ぎ、火をつける。野菜を切る。手が迷う瞬間もあるが、もう恐れではない。失敗することもあるだろう。それでいいのだ。
一週間前、この朝のキッチンには「続けなければ」という圧がかかっていた。コンビニ弁当を断ち切ろうとする自分。その決意を守ろうとする自分。両者が綱引きをしていた。
しかし今朝、その綱引きは終わっていた。
完成した料理を前にして、思う。続けるか続けないか。その二項対立は、最初から間違っていたのではないか。
選択肢は、本当はもっとたくさんあったのだ。同じ味噌汁を作る朝もあれば、新しい料理に挑戦する朝もある。時間がない朝はコンビニに寄ることだってある。完璧に続けることではなく、その時々で選ぶこと。朝8時に、自分のペースで。
食卓に着く。温かい料理を口に運ぶ。昨日とは違う味がする。明日はまた別の何かかもしれない。あるいは、また味噌汁に戻るかもしれない。
それは、まだ決めなくていい。朝8時になったら、その時改めて選べばいい。
窓の外は、いつもと変わらない朝だった。ただ、その朝を迎える自分だけが、少しだけ違う立ち方をしていた。
(完)
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