第6話
金曜の朝、いつもと違う音
金曜の朝、目覚まし時計の音で起きた。いつもと同じ時間。いつもと同じ天気。だが枕の下に何かがある感覚がした。
昨夜、結局レシピアプリを開いていた。ごく簡単な味噌汁のレシピ。わかめと豆腐。それだけ。「これなら朝でもできる」そう思い込みながら、材料をメモした。
キッチンに立つ。いつもより早く。いつもより丁寧に。わかめを戻す。豆腐を切る。包丁の音が台所に響く。火曜日に初めてその音を聞いた時の不安感は、今朝はない。手が覚えているのか、単に慣れただけなのか。判別つかないままだ。
味噌汁が完成した。湯気が立ち上る。
テーブルに向かう。朝8時。ご飯と味噌汁と、冷蔵庫に残っていた漬物。それが今朝の選択肢の結果だ。五日間の選択肢の積み重ねが、この一杯になった。
スプーンを取った。啜る。塩辛い。豆腐の柔らかさ。いつものコンビニ弁当にはない、ばらばらとした実感がある。
食べ終わると、スマートフォンの通知が鳴った。仕事の連絡だ。今日も一日が始まる。いつもと同じ流れ。だが何かが違う。昨日と今日の間に引かれた線。それがどこに向かっているのか、まだ分からない。
皿を洗いながら、ふと思う。来週も同じことができるだろうか。一週間の自炊が習慣になることと、単なる試行錯誤の先端にいることの違い。その境界線は、朝8時のどこかに隠れている。
来週の木曜、同じ迷いが戻ってくるのか。それとも新しい迷いが生まれるのか。まだ答えは出ていない。ただ今朝、その問い自体が少し軽くなった気がした。
続きはまもなく
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