第5話
金曜の朝、迷いは続く
金曜の朝は、予想より早く訪れた。
6時半に目が覚めた。いつもより早い。コンビニの開店時間を気にかけていたわけではないはずなのに、体が勝手に時を刻んでいたのかもしれない。暗い部屋で天井を見つめながら、今朝の8時に何を選ぶのか、その問題が頭の隅で静かに鳴り続けていた。
昨夜、結局レシピアプリは開かなかった。スマートフォンの画面を消したあと、鏡の中の自分の顔を見て、少し笑ってしまった。三日間で何が変わったのか。それでもまだ、自分でも掴めていない。
キッチンに立つと、冷蔵庫は相変わらず静かだ。火曜に切った野菜はもうない。でも、その場所に何かが詰まっていた痕跡は残っている。プラスチックの匂い。人工的な温度感。そういったものが少しずつ薄れていく感覚。
今朝、コンビニに寄ることは簡単だ。十分で済む。並べられた弁当から選ぶだけ。決定は瞬間的で、後悔もない。ただし、その後、皿を洗う必要もない。
一方、朝食を用意するとなれば、火を使う。野菜を切る。匂いが部屋に立ちこめる。食べ終わった後、洗い物の山。月曜から自分がしてきた、その一連の流れが、また始まるということだ。
スマートフォンの時刻表示は6時47分。あと1時間あまり。迷う時間は十分にある。
だが、迷いながら何かを続けるとは、本当はこういうことなのかもしれない。前夜に決めておくのではなく。朝の、その瞬間まで、揺らぎ続けることなのかもしれない。完璧な決心ではなく、その時々の、ほんのわずかな傾きが積み重なること。
キッチンの窓から、まだ薄暗い街並みが見える。やがて朝は白くなっていくだろう。その時、改めて問い直す。
朝8時。今朝の選択肢は、どこにあるのか。