朝焼けの道標

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第1話

第一話 ペダルを踏む決意

通勤ラッシュの駅構内で、またしても誰かの肘が肋骨に当たった。朝の8時47分。毎日この時間だ。息も絶え絶えで電車に揺られながら、ふと窓の外に目をやると、爽やかな朝日が街を照らしている。同じ時間に同じ場所にいるはずなのに、なぜか今日は違って見えた。

その晩、部屋に帰った俺は衝動的に検索を始めていた。「自転車通勤 距離」「ロードバイク 初心者」—画面は次々と情報で満たされていく。家から会社までの距離は約12キロ。決して近くはない。だが、あの満員電車の車両に比べれば、どうということもなく思えた。

土曜日の朝、俺は自転車店に足を運んでいた。店員の話を片耳に聞きながら、一台のロードバイクに跨ってみる。驚くほど軽い。こんなもので本当に12キロ走るのだろうか。

月曜日の朝5時。目覚まし時計も鳴る前に目が覚めた。新しい自転車は玄関に立てかけてある。外はまだ薄暗い。ペダルを踏み込むと、静寂の街道を切り裂いてゆく。呼吸が耳に響く。足の筋肉が熱を持つ。

信号待ちで初めて周囲を見回った時、気づいたのだ。毎日見ていたはずなのに、全く知らない景色が広がっていることに。あの角にある小さな花屋。川沿いの遊歩道。自転車専用レーンの先に続く住宅地。

会社に到着した時、シャツは汗で濡れていた。だが、満員電車の疲労とは全く異なる疲労だった。それは、何か新しいものを手に入れたような、そんな感覚だった。

続きはまもなく

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