第7話
判断の重さ
田中さんの言葉を抱えたまま、僕は登山用品店の前に立っていた。
前話で聞いたアドバイスは、思ったより重くのしかかっていた。「道具選びは山での判断力の入口」という言葉が、単なる激励ではなく、ある種の責任を突きつけているように感じられたのだ。
店内に入ると、色とりどりのザックが壁に掛かっていた。どれも立派に見える。けれど、田中さんが示した三つの基準を思い出すと、それらは単なる商品ではなく、登山という未知の営みへ自分を委ねるための道具に思えた。
店員に「初心者です」と伝えた。恥ずかしさはなかった。むしろ、その瞬間、正直さが信頼を生むということを、実感できた。
店員は丁寧に説明してくれた。背負ってみた。重さの感覚、肩への当たり方、腰への支え。全てが新しかった。複数のザックを試す中で、選択肢の多さが逆に判断を曇らせることにも気づいた。
帰り道、一つのザックを提げていた。完璧な選択かどうかは、まだわからない。だが田中さんの言葉の意味が、ようやく腑に落ちた。失敗すること、修正すること、その繰り返しそのものが、山へ向かう力になるのだろう。
スマートフォンには、田中さんからのメッセージが届いていた。「最初の山、決まった?」
続きはまもなく
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