数字の迷宮

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第4話

第4話 平均値の檻

三日間、主人公は資料の海に沈んだ。

次々と開かれたファイルに、同じ手口が隠されていた。ある商品の「顧客満足度の向上トレンド」は、実際には満足度の低い層が調査対象から脱落しただけ。別の部門の「売上増加の要因分析」は、季節変動を除いた数字だけが強調されていた。

統計手法そのものは正当だ。だからこそ、その使い方の問題に目を向ける者が少ないのだろう。主人公はそこに気付き始めていた。

四日目の朝、メールが届いた。上司からだ。『例の資料について報告をもらいたい』という短い一行。返信を迷ったその時、別のメッセージが画面に浮かんだ。同じチームの後輩・佐藤からだ。

『先輩、報告書の数字について質問があります。実は前任者の分析に疑問があって…』

後輩も同じ違和感に辿り着いていたのだ。

主人公は息を整えた。ここからは単なる懸念を口にするのではなく、正確に、丁寧に伝える必要がある。統計資料の「正しさ」と「真実」のズレを、どう言語化するか。それが試される瞬間だった。

キーボードに指を置きながら、主人公は考える。データは嘘をつかない。だが、データの語り手は、意図的に、あるいは無意識に、都合の良い物語を選び取る。その葛藤の中で、真実に近づくことはできるのか。

メールを打ち始めようとした矢先、会議室への呼び出し通知が届いた。上司だ。資料についての『簡単な打ち合わせ』という名目だった。

主人公は画面を閉じ、立ち上がった。

続きはまもなく

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