型の契約

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第6話

決断の朝

翌朝、佐藤は六時に目が覚めた。窓の外はまだ暗い。枕元のスマートフォンには、プロジェクト管理ツールの通知が溜まっていた。スプリント開始を前に、チームメンバーから質問が来ていたのだ。

一通ずつ目を通しながら、佐藤は考えていた。鈴木が言った言葉が、まだ耳に残っている。「逃げない判断ができる人間だと思った」。それは責任ではなく、覚悟の言葉だったのだろう。

オフィスに着いたのは七時半。誰もいない開発室に、佐藤は一人で向かった。モニターを立ち上げ、金融システムの現在のコード構造を眺める。あちこちに型の不整合がある。ある処理では金額を整数で扱い、別の処理では小数で扱う。そのせいで、丸め誤差が蓄積する可能性があった。

前話で鈴木が描いた図を思い出す。変わる部分と変わらない部分の分離。それは単なるコード整理ではなく、このシステムが何に基づいているのかを明らかにすることだった。

八時になると、チームメンバーが集まり始めた。今日からの新規機能スプリントについて、田中から説明があるはずだ。だが佐藤の中では、もう一つの問題が渦巻いていた。スプリント中に型安全性の問題に取り組む時間をどう作るか。新機能開発と並行しながら、どうやってリファクタリングを進めるか。

鈴木は言った。短期的にはマイナスだと。しかし経営層に「時間をかけたい」と言える根拠は何か。データか。それとも、ただの信念か。

朝礼の直前、鈴木から一通のメールが届いた。件名は「頑張れ」。本文は空白だった。

佐藤は、その空白の中に何が書かれるべきだったのかを考えた。そして、それは自分たちが作るものなのだと気付いた。

続きはまもなく

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