第7話
第7話 形にするということ
母の言葉は、応援というより、静かな問いかけだった。
「ちゃんと何か形にしてね」
その言葉が、何日も頭から離れなかった。
形とは何か。修了証か。ポートフォリオか。それとも、実際に動くプログラムか。YouTubeで学んだことをまとめたノートも形といえるだろうか。高額スクールなら、その修了証が「形」として機能するんだろう。社会的に承認される、わかりやすい形として。
しかし、そこにこそ僕は引っかかっていたのだ。
大学の図書館で、エンジニアの採用面接について書かれた記事を読んだ。そこには、学歴や資格よりも「実際に何ができるか」が重視されるとあった。でも同時に、未経験者の場合、何らかの学習履歴が信頼の第一歩になるとも書かれていた。矛盾しているようで、実は矛盾していないのかもしれない。
翌週、僕は小さなWebアプリをつくることにした。YouTube動画で見かけた技術を組み合わせ、自分が実際に困っていることを解決するツールだ。修了証なんて出ない。誰も褒めてくれない。でも、それが動いたとき、僕の中に何かが変わった。
学習という行為が、消費から創造へ移ったような感覚。
Udemyのコースを一本完了するたびに感じていた「達成感」とは違う、もっと不安定で、だから生々しい手応えがあった。
それでも疑問は残る。このやり方で本当に大丈夫なのか。就職までたどり着けるのか。オンラインスクールなら、キャリアサポートがついている。その安心感の代償が何十万円だとしても、正当な選択肢なのではないか。
僕は再び迷い始めていた。だが、今回の迷いは違う質のものだった。以前は「正解を探す迷い」だったが、今は「選択肢の重さを天秤にかける迷い」だ。
母に、完成したアプリを見せるまでの時間が迫っていた。
続きはまもなく
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