第2話
第2話 選択肢の沼
朝日が差し込む部屋で、僕はノートパソコンを開いた。受信トレイには五つのウェルカムメールが並んでいる。それぞれ「今すぐ始めましょう」と促している。
まず手をつけたのはYouTubeの動画だった。無料だからこそ気軽に。再生時間は8時間。字幕も丁寧で、コメント欄には「わかりやすい」という声が並んでいた。けれど30分も経つと、次々と疑問が湧いた。この動画の内容は本当に最新なのか。ここまで詳しく学ぶ必要があるのか。どこまで進めば「できる」と言えるのか。
Udemyの講座に切り替えると、構成がしっかりしていた。セクション分けがされ、各レッスン後に演習問題がある。三千円なら投資として考えやすい。だが「この内容なら本でも学べるのでは」という思いが頭をよぎる。
そして高額スクールのページを開いた。キャッチコピーは「実務レベルのスキル獲得」。メンターとの面談、課題制作、就職支援まで含まれている。30万円。友人の佐藤はこれを選んだのだ。一瞬、自分が間違った選択をしているのではないかという不安に襲われた。
親友の田中に電話してみた。「結局、何を学んだ?」と聞くと、彼は首をかしげた。「う〜ん、Pythonの基礎とか、ウェブスクレイピングとか。でも実務では結局、必要に応じて調べながらやってた」。それは安心感でもあり、不安でもあった。
机の上には、これまでの講座代の領収書がある。どれもまだ完了していない。焦りの中で選んだものばかりだ。
「そもそも、何のために学んでるんだっけ」
呟きながら、僕は改めて問い直した。就職するため?年収を上げるため?好奇心?それとも、単に周囲に置いていかれたくないから?
答えがはっきりしないまま、僕は五つの通知音に包まれていた。
続きはまもなく
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