引き算の日々

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第一話 通知音の静寂

朝7時。いつもなら枕元の画面が明滅しているはずだった。

金曜の夜、衝動的にスマートフォンを売却した。理由を聞かれても上手く説明できない。ただ、毎日その画面を見ることで、何かが自分から流れ出ていくような感覚が、あまりに強くなっていたのだ。

カフェでコーヒーを飲みながら、両手がやることのない状態に戸惑った。スクロールする動作はない。通知を確認する指はない。こんなに静かな朝は、ここ何年もなかった気がする。

会社では同僚たちが朝礼前も画面に視線を落としている。その風景が、急に奇異に見えた。自分も毎日その中にいたのに。

帰路、駅前の雑多な広告看板が目に入った。こんなにたくさん存在してたのか。スマートフォンの小さな画面に慣れていると、現実の情報量が忘れられてしまうものなんだ。

家に帰ってテーブルを眺めた。充電ケーブル、イヤフォン、モバイルバッテリー。すべて不要になった。本棚には積ん読の本たちがいる。なぜか手を伸ばす気力がなかった。

夜9時。いつもなら寝る直前まで画面を見ていた時間。今夜は、窓の外の街灯だけが光源だ。

静かすぎて、少し不安だった。

続きはまもなく

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