第1話
第一話 「本を読んでも、何も残らない」
また忘れてた。三日前に読み終わった本の、肝心な部分がもう思い出せない。友人に「どんな話だった?」と聞かれて、あたふたしながら曖昧な説明をする。これもう何度目だろう。
読書は好きだ。本屋で新しい本を見つけたときのあの高揚感、徹夜してでも続きが気になる感覚、登場人物に感情移入する体験。全部好きだ。でも、なぜだか本を閉じた瞬間から、大事な部分がするするっと抜け落ちていく気がして、もったいないというか、悔しいというか。
図書館で勉強していたときのこと。隣の席の先輩らしき人が、本を読みながら、なんか変わったメモを取ってるのが目に入った。ただの線引きじゃなくて、ページの端にいろいろ書き込んでいる。ときどき色ペンも使って。それが邪魔でもなく、むしろ本を大事にしてるって感じが伝わってくるんだよね。
思い切って話しかけてみた。
「あの、失礼ですけど、読書メモってどうやって取ってるんですか?」
先輩は笑顔で説明してくれた。その方法は、私が想像していた退屈な「要約」とは全然違ってた。もっと自由で、もっと個人的で、なんか...本と対話してる感じだった。
帰りに、100均でノートと色ペンを買った。明日から試してみようと思う。同じ本でも、読み方が変わるのかな。
続きはまもなく
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