棚卸しの先にあるもの

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第6話

ずれを埋める

いだのだ。

上司は資料をめくった。そこには、クライアントからのコメントが記されていた。専門用語ではなく、素朴な言葉で。

「この人がいると、現場の空気が変わる」
「判断が早い。でも急かされている感じがしない」
「問題が起きたとき、一緒に考えてくれる」

それらは、自分のスキルシートには書かれていなかった。むしろ、自分が「これは価値がない」と思い込んでいたものばかりだ。ルーチン業務への対応力。慣れた環境での人間関係。細かな気配り。

「停滞していると思っていた時間は、実は見えない価値を積み重ねていたんだ」

上司の言葉が、ゆっくり重なる。同時に、別の問いが浮かんだ。なぜ、自分はそれを価値だと認識できなかったのか。

「今から必要なのは、新しいスキルじゃない。自分のスキルと、他者の評価のズレを理解することだ。その上で、どう動くか。それを決めるのは、お前自身だ」

オフィスの窓から、朝日が入ってくる。いつもと同じ光なのに、見え方が変わっていた。

棚卸ししたとき、自分は答えを探していた。でも、答えはそこにはなく、問いの中にあったのだ。自分が何をできるか、ではなく、自分は誰から、何を求められているのか。

机に戻ると、メールが入っていた。人事からの連絡。上司が集めた評価資料の背景にある、複数のプロジェクトの記録。その中に、自分が気づかずに解決していた課題。自分が当たり前だと思っていた判断。

もう一度、それらを見つめ直す必要があった。今度は、違う角度から。

続きはまもなく

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