第8話
第8話 配分の先にあるもの
給料日の翌日。口座を3つに分けた。
生活費。貯蓄。そして、少しの余裕資金。
最初に引く、という行為は、これまでの自分にはなかった。給料が入ってから「残ったら貯蓄しよう」という後付けの考え方ではなく、最初から枠を決める。その差は小さいようで、心理的には大きく異なっていた。
一週間経った。金欠状態は来ていない。
家計簿を開くと、いつもより支出が整理されている。なぜなら、使える額が決まっているからだ。その制限が、判断を迫ってくる。本当に必要か。今でなくてもいいか。そんな問い掛けが、自然と生まれる。
気づいたのは、完璧なアプリを探していた時間は、実は自分の行動パターンから目を逸らす時間だったのかもしれないということだ。ツールを変えることで、内面の変化を後付けしようとしていた。
だが、変わるべきは、お金との向き合い方そのものだった。
給料日前、いつもの金欠状態で不安に駆られていた頃の自分。その自分を責める気はない。ただ、その状態の中で何度も家計簿アプリを乗り換えていた自分を思い出すと、何か違う道もあったのではないか、と感じる。
今月の中旬。余裕資金はまだ残っている。
家計簿を眺めることは、もはや「失敗を確認する作業」ではなくなっていた。先月との比較ではなく、今の自分がどう選択しているかを見つめる営みになっていた。
お金を管理することは、実は自分を管理することなのだと気づいた。アプリの機能の充実度ではなく、どう使うか。その小さな積み重ねが、心と支出のバランスシートを作っていくのだ。
スマホの画面を閉じた。明日も、淡々と記録をつけよう。それが、今の自分にできることだった。
(完)
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