第3話
見たくない数字と、その先
帰宅後、封筒から領収書を全部出した。クレジットカードの明細も、銀行アプリも開いた。
1ヶ月分。これまで目を背けてきた記録が、机の上に散乱している。
アプリに入力し始めると、パターンが見えてきた。仕事が忙しい日ほど、コンビニに寄る。疲れてる夜ほど、スマホで何か買ってる。金額は小さくても、回数が多い。その繰り返しが、気づかないうちに積み重なっている。
「これ、ストレスなのかな」
独り言が出た。家計簿をつけてみて初めて、自分の行動と心の状態が連動してることに気づいた。別に必要じゃないのに、何かを買うことで気分をリセットしようとしてた。その瞬間の気持ちよさと、その後の罪悪感のセット。それを何度も繰り返してる。
一週間の入力を終えた時点で、今月の支出が見えた。給料の6割以上が、「計画のない小さな買い物」で消えていた。残りの4割で、実は生活できてる。その事実が、妙に冷静に感じた。
スマホを置いて、天井を見つめる。
完璧なアプリを探してた理由が、ようやく腑に落ちた気がする。自分は「お金の記録」が欲しかったんじゃなく、「責任を取らずに変わりたかった」んだ。ツールが変われば、自分も変わるはずだと。
でも、変わるのはツールじゃなく、自分の選択なんだ。毎日毎日、小さな判断の積み重ね。それを数字で見つめることが、これ以上逃げられない状態を作ってくれてる。
明日も、何かに使ったら入力する。その退屈で単純な作業を、続けてみようと思った。
ただし、完璧を目指さずに。
続きはまもなく
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