オフシーズンの過ごし方

4/4

第4話

決断と揺らぎ

正月を挟んで、心は二つに裂けたままだった。

帰省先の実家で、父に打ち明けた。「野球か、勉強か、どっちか選べってことか」と父は言った。俺はそれを否定したかったけど、言葉が出なかった。来季契約の返事は、会社側も待っている。試験の合格発表は二月中旬だ。時間は残っていない。

帰宅後、勉強部屋の机の前に座った。今日も朝の一時間をやる予定だ。だが、昨日の復習ノートを開いても、文字が頭に入ってこない。模試から三週間。次の本試験まで、あと六週間。二十点の差を埋めるには、このペースで十分なのか、それとも足りないのか。

妻は台所にいて、今日の練習メニューについてメールを確認している音が聞こえた。来季も野球を続けるなら、オフシーズンの使い方は今年とは違うはずだ。その時間で勉強はできない。

スマートフォンが鳴った。フロントからだ。「契約の件、そろそろ結論をお聞きしたいのですが」という音声だった。

返事を保留にしたまま、俺は答案用紙の束を手に取った。模試の解き直しである。間違えた部分に、新しく赤ペンで印をつけながら、考えた。

野球も勉強も、一流を目指すなら覚悟が必要だ。中途半端な気持ちでは、どちらも成就しない。それは二十年のキャリアで、嫌というほど学んだ。

だが、アスリートとしての人生は有限だ。その後の人生も、また有限だ。

スマートフォンの音声を再生した。フロントの声が続いていた。「お返事をお待ちしております」

続きはまもなく

目次

コメント