第6話
言語を習う
フットサルというスポーツが、どのようなルールと流れで動いているのか。そうした基礎を、自分の身体に染み込ませていく過程なのだと理解した瞬間、視界が変わった。
コート上の動きが、単なる混乱ではなく、ある種の秩序を持つものとして映り始めたのだ。相手の攻撃を見ていても、選手たちがボールを追うのではなく、むしろボールが来そうな場所へあらかじめ身体を運んでいることに気づく。防御の意思は、常に先読みの中にあった。
自分たちも同じことをしようとしていた。田中のシュートを見た直後、相手のゴールキーパーがボールの落下点を予測して腕を上げている。その判断は一瞬だ。だから、この言語は瞬間瞬間で更新されていく。相手チームも、毎回の攻撃から何かを学んでいるはずだった。
「集中しろ、ここから詰めるぞ」
田中の指示が飛ぶ。後半の中盤。スコアはまだ自分たちが追う立場だったが、フィールドの空気は明らかに変わっていた。相手も、この職場の素人ばかりのチームが、ただの素人ではなくなってきていることに気づき始めている。その微妙な緊張感が、コート全体を支配していた。
ボールが自分のもとに転がってくる。今度は迷いがなかった。左のスペースが詰まっている。だから中央へ。その判断が、もう反射ではなく、思考になっていた。
ゴールまで、あと何点。その数字よりも大事なことが、ここにはある。自分はそう感じていた。
続きはまもなく
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