第3話
第3話 リズムをつかむ
後半戦に入ると、コートの景色が少し違って見えた。
同じ狭さなのに、先ほどまでのような窮屈さが薄れている。田中とのやり取りの中で、自分たちの陣形や相手の位置関係が、ぼんやりと認識できるようになってきたのだ。
「もう一本、ボール行きます」
田中の掛け声に、足が反応した。パスを受ける位置、ボールの落下地点、その先の展開。すべてが同時に頭をよぎるわけではなく、むしろ考えるより先に身体が動いている。蹴った後に初めて、自分が何をしたのか気づく。そんな状態だった。
成功もあれば失敗もある。ボールを奪われることもあるし、パスが繋がらないこともある。だが、その試行錯誤の過程が、妙に充足感をもたらしていた。
ふと、田中以外の同僚たちの動きが目に入った。彼らはもっと自由に、迷いなくボールを扱っている。長年の経験の差は明白だ。だから余計に、自分がここで何かを学べているのだという実感が湧いた。
「上手くなってますね」
今度の田中の言葉は、単なる励ましではなく、事実の指摘に聞こえた。驚いたことに、自分もそれを信じられるようになっていた。
コートの端で給水タイムに入った時、汗ばんだシャツが皮膚に貼りつく。疲労感は増している。だが、心の方は逆だ。もっと続けたい。もっと試してみたい。その欲望は、さっきよりずっと強くなっていた。
「次、一度ゲーム形式でやってみません?」
田中の提案に、反射的に頷いていた。自分でも意外なほど、躊躇がなかった。
続きはまもなく
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