第6話
選択の先にあるもの
面接の日程調整メールを送った直後、田中から連絡が入った。「進捗どう?」という簡潔な内容だった。
返信を迷った。正直に「まだ決められていない」と答えるべきか、それとも「検討中です」と濁すべきか。だが、これまでの会話の流れから、田中は前者を望んでいるような気がした。
「実は、給与だけでは比較できないことに気づきました」と打ち込んでから、送信を躊躇した。
スマートフォンを置き、窓の外を眺める。30代という年代は、判断の重さが増す時期なのだと改めて感じた。20代なら失敗が学びで済むことも、30代ではそうとは限らない。家族計画、親の介護、人間関係の深さ。すべてが複雑に絡み合っている。
それでも、新NISAの年間360万円という枠は脳裏から離れない。その枠を目一杯使う人生と、そうでない人生。どちらが正解なのか、世間一般の「正解」は示してくれる。だが、自分にとっての正解は、その先にあるのではないか。
メッセージを送信した。数秒後、田中から返信が届いた。「それなら、一度改めて話そう。来週の金曜、時間ある?」
来週の金曜日。面接は火曜と水曜に予定されている。その二日間で、何が変わるのか。あるいは、何も変わらないのか。
いずれにせよ、決定を先延ばしにすることはできない。その認識が、ようやく重くのしかかってきた。
続きはまもなく
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