観測者たちの季節

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第一話 半期報告書

面談は金曜日だと予告されたのが月曜日の朝礼だった。いつもより会議室は静かだった。

私たちの部門は、基礎研究を扱っている。成果を数字に変えることが難しい領域だ。論文の数、引用回数、特許出願件数——こうした指標は確かに存在するが、それが本当に「研究の価値」を測定しているのかは、誰もが薄々感じている疑問だ。

デスクに戻ると、評価面談準備シートがメールで配信されていた。「この半年間の主な成果」「今後の展望」「自己評価」といった項目が並んでいる。私は天井を見つめた。

だれかが「これ、科学的じゃないよね」とつぶやいたのが聞こえた。廊下での会話だ。正しい指摘だと思った。本来、実験設計には対照群が必要だし、複数の測定方法を組み合わせるべきだ。だが人事評価ではそうはいかない。人間は、単一の尺度で測定される生き物として扱われる。

昼食時、何人かが集まった。話題は面談の準備の仕方についてだった。「とにかく数字を盛ること」という意見もあれば、「ありのままを伝えるべき」という意見もある。両方一理ある。実験データを過度に解釈するのは科学的倫理に反するが、自分の価値を過度に控えめに伝えるのも得策ではない。

帰り道、ずっと考えていた。もし私たちの研究が数値化できない価値を生み出しているとしたら、どうやってそれを評価面談で伝えるのか。あるいは、本当はそこに価値がないのか。それとも、評価制度そのものに限界があるのか。

金曜日まであと四日。シートの空白を埋めるのに、これまで以上に言葉を選ぶことになりそうだ。

続きはまもなく

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