引き算の日常

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第6話

第6話 選ぶことの重さ

朝日が部屋に差し込む。いつもと同じ時間に目覚めたはずだが、光の入り方が違って見えた。本棚の空いたスペースのせいか。

改めて部屋全体を見渡す。セーター、本、そしてまだ手をつけていない引き出しの中身たち。それぞれが「必要か、必要でないか」という単純な二項対立ではなく、もっと複雑な存在に思えた。

仕事から帰宅した夜、机の上の書類の山に目がいった。子どもの頃から保存している手紙、学生時代のノート、前職の資料。手放す理由も、残す理由も、自分の中にはある。しかし、その両方が同じくらい重く感じられた。

スマートフォンに、断捨離について調べたサイトのリンクが何個も残っていた。「一年使わないものは不要」という基準も、「迷ったら捨てる」というアドバイスも、どこか自分の状況と合致していない。本来、生活は個人的なはずなのに、どうしてこれほど正解を求めてしまうのか。

同期の言葉が、また浮かぶ。「減らすのは楽だけど、手放すのは別」。

その意味が、ようやく理解できた気がした。物を手放すことは、そこに紐づいた時間、感情、判断を全て手放すことなのだ。だからこそ、部屋が片付いても、心はまだ片付いていない。むしろ、片付けるきっかけになった本当の問題が、ようやく見える形で浮上し始めたのかもしれない。

明日、もう一度、引き出しを開けよう。今度は、何を手放すかではなく、なぜそれが必要だったのか、その理由を問い直しながら。その問いの繰り返しの中に、自分を変えるプロセスがあるのだと感じていた。

続きはまもなく

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