第3話
第3話 周波数の彼方
田中が去った後、佐藤は再び解析装置に向き直った。波形は相変わらず画面に映り続けている。規則的で、しかし単純ではない。まるで何かが意図を込めて、リズムを刻むように。
佐藤は手帳を取り出し、信号の間隔を記録し始めた。四十六時間前、三十時間前、そして十七分前。単純な周期ではない。だが、何らかの法則があるはずだ。
彼は周波数を少しずつ調整し、信号の周辺域を探索した。するとノイズの層の奥に、別の構造が見え始めた。二つの周波数が複合しているのだ。一つは既に確認した規則的な信号。もう一つは、それより低い周波数で、非常にゆっくりした変動を示していた。
心臓が跳ねた。低周波のパターンを拡大すると、その先には数値が隠されているようだった。距離を示しているのか。それとも別の何かか。
管制室の壁掛け時計が22時を指した。夜勤シフトの交代まで、あと二時間。この間に何をすべきか、佐藤は考えあぐねていた。田中に報告すれば、本来の通報ルートに従わなければならない。そうなれば、この信号は上層部の判断を仰ぐことになる。
だが直感は、そこに待つべき何かがあることを告げていた。
佐藤は再び計算を始めた。次の信号は、いつ現れるのか。前の三度の発信間隔から、次の到来時刻を推測できるかもしれない。
画面に手書きの計算が映し出される。指は震えていた。
そのとき、管制室全体に軽いアラームが鳴った。新しいデータの受信だ。佐藤は画面を確認する。火星探査機からの定期通信——ではなく。
予定外の信号が、また届いていた。
時刻は22時11分。前回から五十四分の間隔。佐藤の予測より十七分早い。波形は同じ構造だが、低周波部分の数値が変わっていた。
それは、まるで距離が縮まっていることを示していた。
続きはまもなく
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