第6話
選択を重ねることの意味
月曜日の朝、オフィスの席に着くと、先輩が声をかけてきた。
「その後、どう。投資信託」
私は、正直に答えることにした。
「実は、まだ迷っています。基準価額を毎日確認してしまって、その変動に一喜一憂してしまうんです。これは、自分に向いているのかなって」
先輩は、特に驚いた様子もなく頷いた。
「それはいい兆候だと思う。金額の増減に反応するのは、自分がお金とどう付き合いたいのかを、体で学んでいる過程だから。多くの人は、その揺らぎを感じる前に、やめてしまったり、逆に感情的になって判断を誤ったりする。揺らいでいるってことは、ちゃんと向き合ってるってことだよ」
私は、その言葉を咀嚼しながら考えた。
先輩が言うように、この迷いや不安も、単なるネガティブな感情ではなく、自分が何を大事にしているのかを知るための情報かもしれない。毎日口座を確認したくなる心理、基準価額が下がった時の焦り、上がった時の喜び。それらはすべて、私が無意識に何かを求めていることの表れなのではないか。
「来月も同じ五万円を入金しようと思います。ただし、毎日確認するのはやめて、月に一回だけ見ることにしました」
先輩は、微笑んだ。
「いいね。その『ルール作り』が大切なんだ。自分がどんなペースなら、この選択と付き合えるのかを知ること。それは投資信託だけじゃなくて、給料の使い方全体にも繋がる」
帰りの電車の中で、私は考えていた。
先月までの私は、月給を『貯める』か『使う』かの二者択一で捉えていた。でも今、それは多くの選択肢の中から、自分のペースと価値観に合ったものを、試行錯誤しながら選んでいく過程なのだと理解した。
そして、その過程こそが、社会人として『給料と付き合う』ということなのかもしれない。
次の給料日がくるまで、私はこの問いを抱え続けるのだろう。その問い続ける時間そのものが、実は一番大切なのだと、ようやく気づき始めていた。
続きはまもなく
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