副業エンジニアの試行錯誤

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第3話

ユーザーの声と、自分の声

この言葉の重さを、どう受け止めるべきか。

朝食を摂りながら、スマートフォンの画面を何度も見返していた。「続けてくれたら嬉しいです」。シンプルな一文だが、そこには複数の意味が重なっているように感じた。

ツールを続けてほしい。という気持ちもあれば、その先の—もしかして—有料化される日まで無料でいてほしい、という暗黙の願いも、もしかしたら含まれているのではないか。

会社に着いて、いつもの業務に戻った。データベースの最適化、バグの修正、レビュー。日中のエンジニアとしての自分は、明確な要件の下で動く。曖昧さは許されない環境だ。その分、判断が容易だ。

でも個人開発は違う。何が正解かを定義するのは、自分自身なのだ。

昼休み、社員食堂で同期と食事をしていた。その同期も、最近副業を始めたばかりだという。

「やっぱり最初は無料にするしかないよね」と同期が言った。「ユーザー集めてからじゃないと、有料化は難しい」

一理ある。だが本当にそうなのか。ツールの価値を信じているなら、最初から有料にする選択肢だってあるはずだ。もしくは、フリーミアムモデル。無料と有料の層を分ける方法。

あるいは、今のまま無料で続けて、いずれユーザーからの寄付を募る方法もある。

どの選択肢も、それぞれの代償を伴っていた。

帰社後、メールをチェックしていると、別のユーザーから問い合わせが入っていた。「このツール、法人利用してもいいですか?」

それは想定していなかった質問だ。利用規約には何も書いていない。個人開発だからという漠然とした前提だけで、規約すら整備していなかったのだ。

夜間開発の時間が、急に複雑さを増した。技術的な改善だけでなく、事業的な決定が迫られていた。それも、一つではなく、複数の方向から同時に。

ラップトップの前に座った。やらるべきことの優先順位を、手書きで列挙してみた。機能追加。ドキュメント整備。利用規約の作成。料金プランの検討。SNS での情報発信。

どれも後回しにできない気がした。

スマートフォンを手にして、あのユーザーのメッセージを読み直す。「続けてくれたら嬉しいです」

この人は、自分が作ったツールの価値を認識してくれている。でも同時に、その人の期待が、今の自分にのしかかっている。

責任感と、それを果たせるか分からない不安が混在していた。

判断の先送りは決定だ。昨晩、そう気づいた自分。でも、今の自分には、まだ判断する材料が足りていないのではないか。

そう思い至ったとき、新しい問いが浮かんだ。

このツールは、本当に事業にする価値があるのか。それとも、良質な趣味のまま続けるのか。

その判断をするために、自分は何を知る必要があるのか。

続きはまもなく

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