第1話
第一話 目覚まし時計の向こう側
朝日が窓から差し込む。いつもより五分早く目が覚めた。
スマートフォンを手に取らないこと。これが今月の誓いだった。別にSNSの時間が無駄だと説教するつもりはない。ただ、起床直後の頭をクリアなまま保ちたかった。
布団から出て、冷たい床に足をつける。その感覚だけで、何か違う一日が始まるような気がした。窓を開けると、隣家の猫が塀の上で伸びをしている。こんな光景、毎朝そこにあったはずなのに、今日ほど鮮明に見えたことはなかった。
キッチンに向かい、白湯を作る。ケトルが湯気を上げるまでの間、昨日のことを考える。特に重要なことはない。ただ、この五分間が自分の朝に必要なのだと、どこかで確信していた。
目覚まし時計は、いつもより一五分早くセットした。朝という時間を、もう少し自分のペースで過ごしたい。そう思い立ったのは、先週の疲労感がきっかけだった。毎日が同じように流れ去ってしまう感覚。それを少しでも変えたいと。
カップに注がれた白湯が、ゆっくり冷めていく。その間、自分は何もしない。ただ、呼吸をして、朝の空気を感じる。
小さなことだ。けれど、何かが変わろうとしているような予感があった。