第2話
第2話 最初の一歩は、思ったより重い
朝礼の時間、上司の声が耳に入らない。机の引き出しには、昨夜プリントアウトした副業ガイドが隠されている。
「副業初心者向け」と謳われたそのPDFは、20ページ以上あった。読めば読むほど、選択肢は増えるばかりだ。
お昼休み、社員食堂で同期の田中に話しかけてみた。
「田中さん、副業とかやってる?」
ふいの質問に、田中は箸を止めた。
「え、なんで急に。まあ、ちょっと何か考えたことはあるけど、結局めんどくさくてやってない。やる人ってすごいなって思うよ」
その返答が、妙に心に引っかかった。
帰宅後、俺は改めて情報を整理してみた。SNSで見かける「月10万円」の文字。だが、よく読むとそこにはいつも小さい字で「個人差があります」と書かれている。投稿者がどのくらいの時間をかけているのか、元々どんなスキルを持っていたのか、そもそも今いくら稼いでいるのか。そうした具体的な話は、どこにも書かれていなかった。
プログラミングスクールの広告をクリックしてみた。入校金だけで十数万円。「3ヶ月で身につく」と書かれているが、その後の就職保証はない。
ライティングの案件サイトを見てみると、最初の仕事は単価が非常に安い。月10万円に到達するには、相当な件数をこなす必要がありそうだ。
夜の11時。俺はまだスマホを握っていた。
SNSの投稿者のプロフィールをもう一度見てみた。コンサルタント肩書きのその人物は、今どんなビジネスをしているのか。そもそも、副業ではなく本業になっていないだろうか。
疑問は増えるばかりだ。だが同時に、別の感情も湧いてきていた。
このまま何もしないのか。それとも、とりあえず何かを始めるのか。
満員電車での「月10万円」という言葉に心を掴まれてから、まだ2日しか経っていない。
なのに、何もしないことへの焦りと、始めることへの不安が、俺の中で渦巻いていた。
続きはまもなく
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