引き算の日々

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第1話

第一話 積み重ねられたもの

土曜日の午後、佐藤は自分の部屋を前に途方に暮れていた。ベッドの上には、ここ数ヶ月で買ったであろう衣類が山積みになっている。クローゼットを開けても同じ状況だ。同期の山田が先月、部屋を片付けたという話を聞いたのがきっかけだった。彼は「スッキリした」と嬉しそうに話していたし、仕事の効率も上がったと言っていた。

本を一冊手に取る。ミニマルな暮らしについて書かれたものだ。Amazonで高評価だったから買ったのだが、まだ半分も読んでいない。本棚を見ると、似たようなタイトルが三冊ある。どれも途中で読むのを止めていた。

じゃあ、まずこの本たちから始めるか。そう決めて、二冊をゴミ袋に入れた。一冊は友人に貸したままだったかもしれないが、思い出せない。

次は衣類だ。去年買ったけど一度も着ていないセーターがある。サイズは合っているはずだが、なぜか手を伸ばさない。そういう服ほど、長く保管してしまう傾向がある。捨てるべきか、それとも痩せたら着るかもしれないから取っておくべきか。

迷う。実は、この迷いの時間が一番多いのではないか。そんなことに気づき始めた。物を減らすことよりも、本当に大切なものを見極めることの方が難しい。何が必要で、何が不要か。その判断を日々繰り返すことが、実はとても疲れるのだ。

夕方まで続いたその作業は、想像以上に時間がかかった。ゴミ袋は五袋。部屋はまだまだ「ミニマル」とは言い難い。だが、確かに何かが変わった気がした。それが良い変化なのか、まだ判断がつかないのだが。

スマートフォンで、先ほどの山田にメッセージを送った。「片付けって、実は選択を増やすことなのかもしれません」と。返信は来ていない。

続きはまもなく

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