第6話
第6話 声が変わる瞬間
スピーカーから聞こえてくる僕たちの声は、カフェの空気を通して、何かに変わっていた。
「聞こえますか」と孫娘が言う。「これが『編集前』です。」
ノートパソコンの画面には、波形が映っていた。青と白の山が何本も立っていて、それが僕たちの声の形だという。視覚化された音。目に見える言葉。
「ここから何ができるのか」僕は聞いた。
「沈黙を削ったり、ノイズを消したり、音量を調整したり。」孫娘は淡々と説明する。「でも、祖父さん。編集ってやっぱり、本当に必要なものだけ残す作業なんだと思うんです。」
そう言って、彼女は波形のある部分をクリックした。僕が「その分からなさの中に、何か大事なものがあるんじゃないか」と言った部分だ。その周辺の沈黙が、少しだけ削られた。
「長すぎる間は、聞き手を置き去りにするんです。でも、完全になくすと、人間らしさがなくなる。」
再生してみると、確かに違っていた。より洗練されて、けれど、どこか息遣いが残っている。生きている感じがする。
「これって」僕は考えながら言った。「昔のラジオの編集作業と同じだ。」
「そうなんですか」
「そう。でも、あの頃は専門の編集者がいて、技術者がいて。今、君一人でやってしまう。」
孫娘は微笑んだ。「だからこそ、自分たちの『声』が何かが、より見えてくるんじゃないですか。」
カフェの外では、秋の光が傾きかけていた。僕たちはまだ、本当の第一話さえ作り終えていない。でも、確かに何かが動き始めている。
「次は」孫娘が言った。「何回か録音してみて、パターンを探すんです。どういうテンポで、どういう間で、どういう内容が『僕たちらしい』のか。」
試行錯誤。その言葉が、妙に懐かしく感じられた。
続きはまもなく
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