型の迷宮

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第2話

第2話 三つの道

TypeScriptの本を何度も読み返した。夜の静寛な会議室で、蛍光灯の下。画面に映るのは、鈴木さんが見せてくれたコードの断片だ。

const data = fetchFromDB();

これだけ。dataが何なのか、誰にもわからない。配列か、オブジェクトか、文字列か。フロントエンドに渡されて、そこでもう一度誰かが推測する。そうやって20年。

朝5時、メールが来た。松本さんだ。

「おはよう。実は3つのアプローチがある。明日の朝会で聞いてくれ。鈴木、田辺、岡本のチームリーダーからそれぞれプレゼンがある」

翌朝。会議室に3人が並んだ。

鈴木さんが最初に立った。「段階的な導入。まず外部インターフェースだけ型をつける。中身は後から。既存コードへの影響を最小化する」

次は田辺さん。ベテランだ。「いや、そんなんじゃ中途半端だ。思い切ってスキーマ設計からやり直す。時間かかるけど、まともなシステムになる」

最後が岡本さん。インフラ寄りの人だ。「両方の負債を抱えるな。型をつけるんじゃなくて、新しいシステムを別で作って、段階的に移行する。古いやつは徐々に廃止」

また沈黙が降りた。3人とも真剣な顔をしてる。

松本さんが俺を見た。「田中君。どう思う」

まさかここで意見を聞かれるとは思わなかった。俺は手を上げた。

「えっと…全部一理ありますよね。で、全部間違ってる可能性も…」

「なぜだ」鈴木さんが言った。

「だって、選ぶんじゃなくて、全体像を見てから決めるべきなんじゃないですか。システムのどこがどうなってるのか、誰も正確に把握してないって、昨日わかった。だから…」

そこまで話してから、俺は気づいた。

この先、何を言うべきかわからない。

3つの道は確かに対立していた。でもその対立は、見えない情報の上で起きている。だとしたら、先に見えるようにしなきゃいけない。

でも、それもプロジェクトじゃん。

と、鈴木さんが微かに笑った。「続けろ」

続きはまもなく

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