第1話
第一話 銀行口座の残高を見つめて
給与が振り込まれた翌日のこと。私は銀行のATMの残高表示をぼんやり眺めていた。毎月同じ額が貯まっていく。悪い状況ではない。だが、ふと考えてみると、この先本当にこれだけで大丈夫だろうか。
職場の先輩が何気なく「投資信託、始めました」と話すのを聞いたのはその数日後だ。普段は静かな同僚だが、珍しく金銭面の話題を口にした。返利回りがどうとか、信託報酬がどうとか、聞き慣れない言葉が飛び交った。私は生返事をしながらも、内心では興味が湧いていた。
帰宅後、スマートフォンで「投資信託 初心者」と検索してみた。ページが次々と開く。長期積立が基本らしい。プロが運用してくれるので手間がかからない。でも、元本割れのリスクもあるという。情報の量に圧倒されながらも、私は少しずつ知識を取り込んでいった。
翌週、銀行の窓口に足を運んだ。年配の窓口係員は丁寧に説明してくれたが、正直なところ全てを理解したわけではない。ただ、彼女が示してくれた基金の過去パフォーマンス表を見ていると、ゼロではなく何かが起きているのだと感じた。
口座を開設するための書類に署名する瞬間、心臓が少し高鳴った。これは責任ある選択だ。同時に、これまで銀行預金に甘えていた自分からの脱却でもあった。第一歩は、思ったより重かった。
続きはまもなく
目次