接続を手放す日まで

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第3話

選別の重さ

写真フォルダを前に、手が止まった。

自動バックアップ。クラウド同期。いつでも、どこからでもアクセスできる環境。それは便利だ。確かに便利だった。でも、その便利さの中で、何かが抜け落ちていたのかもしれない。

一枚の写真を選ぶ。三年前、山で撮った夕焼けだ。その時のことを思い出す。スマホのカメラロールに自動で溜まった数千枚の中から、これを『保存する』と意識的に選んだのはいつだろう。

選んだ覚えがない。

いや、正確には違う。撮った時点で、既に全部がクラウドに行ってる。あとは容量管理の都合で『ローカルから削除』するかしないか、そんな程度の選別しかしていなかった。

自分の人生の記録が、自分が選んだものではなく、システムが判断した『重要度』で整理されている。その不気味さに、初めてちゃんと向き合っている。

画面の向こうで、Googleのサーバーに保管されたその写真。自分のアカウントさえあれば、どの端末からでも見られる。便利だ。でも失ったものもある。それが何なのか、まだ言葉にならない。

仕事用のドキュメントとは違う。あの迷いはなかった。プロジェクトが終われば、その記録は不要になる。判断はシンプルだ。

でも写真は違う。人生の痕跡だ。それを、アルゴリズムに委ねていいのか。

彼はノートを開いた。デジタル整理の方針を書き出すのではなく、問い直すための言葉を書き始めた。

『手元に残すべきデータとは。それは、アクセスしやすいデータではなく。自分が何度も選び直したデータ、なのではないか。』

次のステップが見えていない。でも、その曖昧さが、今は心地よかった。

続きはまもなく

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