第1話
第一話 同期の重さ
朝起きてスマホを手にするまでに、たぶん3秒かかっていない。
クラウドは常に同期している。メール、写真、ブラウザの履歴、全部。その瞬間も、どこかのサーバーで私のデータが複製されて、分析されて、誰かに見られているのかもしれない。考えすぎだと自分でも思う。でもエンジニアだからこそ、仕組みが怖い。
今朝、同期に時間がかかった。ネットワーク遅延のせいだ。その数秒間、私は自分のデータにアクセスできなかった。連絡先も、予定表も、仕事のファイルも全部。その時に気づいた。依存してる。深刻に。
何年前からこんなになったんだろう。昔は、大事なものは手元に置いてた。紙のアドレス帳、ローカルのテキストファイル、バックアップディスク。アナログだけど、確実だった。今は、サービスが終了したら終わり。規約が変わったら終わり。アカウントを失ったら終わり。
職場では効率効率と言われる。クラウドなら場所を選ばない、デバイスを選ばない、チームで共有できる。その通りだ。でもそれって、常に繋がっていることが前提だ。常に同期されていることが前提だ。
もし全部、消えたら。いや、消えるわけないか。でも、アクセスできなくなったら。
昨夜、ベッドの中でずっと考えてた。本当に必要なのって、何だ。仕事のファイルのうち、本当に手元に置いておきたいのって、どれだけあるのか。写真は、全部クラウドに預ける必要があるのか。
そう思い始めたら、止められなくなった。
今夜、パソコンを開いて、何を削除するか、何を手元に残すか、リストを作ってみようと思ってる。小さく始める。ミニマルに始める。接続を、少しずつ手放してみる。怖いけど。
続きはまもなく
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