朝の一本道

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第2話

火曜日の花

火曜日の朝、自転車に乗った。いつもより少し早く家を出た。六時三十五分。週末に資料を見直した結果、月曜日の夜遅くまで手直しをしていたのだ。

駅前の交差点を左に曲がり、商店街の脇道へ入る。ペダルを踏みながら、今日のことを考えていた。午後の会議で、修正した資料を上司に見せる予定だ。実装を意識した構成に変えてみた。反応がどうなるか、見当がつかない。

左側の花屋が見えてきた。月曜日の朝、この店の前を通ったときはツツジのような花が並んでいた。火曜日は花が入れ替わる日だ。確認するつもりで、自転車の速度を落とした。

しかし、止まるわけにはいかない。通勤時間は決まっている。視線だけを向けながら、ペダルを踏み続けた。すると、いつもと違う光景が目に入った。花屋の前に、年配の男性が立っていた。毎日ここを通っているのに、初めて見る顔だ。

その男性は、花を眺めていた。動かずに、じっと眺めている。何かを選んでいるのではなく、ただ花を見つめているように見えた。

自転車はそのまま通り過ぎた。前方の信号が赤になっているのが見える。ブレーキをかける。いつものように信号待ちの間、周囲を見回した。向かいのビルのツタは、やはり春の緑色だ。

そのとき、背後から自転車の音が聞こえた。花屋の前にいた男性が、自転車で信号に向かって来ている。同じ方向に進むのだろうか。そんなことを考えていると、男性は自分の横に並んだ。

特に変わったところはない。ただの初老の男性だ。だが、その人物は自分と同じ赤い信号を待っていた。信号が青になった。ペダルを踏み込む。その男性も、一緒にペダルを踏み込んだ。

いつもの一本道。だが、今日は違う。自分以外に、この道を同じペースで進む人間がいる。その事実が、不思議な感覚を与えた。あと五分で到着だ。その間、その男性は本当に自分の後ろにいるのだろうか。時々、後ろを振り返りたい気持ちになりながら、自転車は進んでいった。

続きはまもなく

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