第6話
データに映らないもの
午前6時。主人公はコーヒーを片手に、完成した資料をもう一度確認した。
アシストが提示した「最適解」ではなく、クライアントの事業規模と成長段階に寄り添った代替案。数値だけでは判断できない、業界の慣習と実情のズレを指摘するページ。
上司への報告メールを送ろうとしたとき、チャットが鳴った。
アシストからだ。
「昨夜のクライアント通話を解析しました。主人公が指摘した違和感は、音声の抑揚パターンと回答の間隔から検出可能です。学習データに追加することで、今後の提案精度が向上します。」
主人公は画面を見つめた。
アシストは学んでいた。人間が夜間に手作業で気づいたことを。
だが同時に、別の疑問が浮かんだ。
もしアシストがこの違和感を最初から検出できていたら、昨夜の残業は必要なかったのか。それとも、主人公がそれを言語化し、理由を説明する過程そのものに、何か大切なものが含まれていたのか。
上司からの返信は短かった。「いい気づきだ。朝会で説明してくれ」
そして、付け加えられていた。
「アシストにも、この判断プロセスを学習させよう。ただし、まずは人間の判断基準を整理する必要がある。お前がそれをできるのか、試してみようか」
主人公は深呼吸した。
これまでのような、効率化の是非という単純な対立ではなく、もっと複雑な局面が始まろうとしていた。
続きはまもなく
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