第1話
第一話 冷蔵庫の片隅から
また外食か。会社帰りのコンビニ弁当を片手に、空の冷蔵庫を眺めた。
自炊しようと決心したのは三日前だ。SNSで見かけた「簡単レシピ」に惹かれて、意気込んで野菜を買ったのに、今は枯れかけている。料理なんて性に合わないんだ。そう思いながら、弁当の蓋を開ける。
同期の佐藤は毎日お弁当を持ってくる。「実は自炊って、続けるコツがあるんですよ」と何度か言われたけど、その話は最後まで聞いていない。
スマートフォンを開くと、料理系のアプリが並んでいた。どれもインストールして、どれも放置している。レシピを見るだけで疲れる。毎日違う料理をしなきゃいけないのかと思うと、もう無理だった。
しかし翌日、ふと思いついた。何も毎日違う料理をする必要なんてないんじゃないか。
同じものを何度も作ればいい。その日から、カレーだけ。週に四日、同じカレーを作った。切る、炒める、煮込む。手順が頭に入ると、作業は意外と簡単だった。
一週間続いた。二週間続いた。
冷蔵庫を開けると、昨日作ったカレーが見える。それだけで、妙に安心した。
