第3話
目的地を決める
5年後10年後を考える、というのは思いのほか難しかった。
家計簿をつけていた時は、過去のお金の流れを追うだけで済んでいた。でも未来となると、『こうなっていたら』という仮定の上に仮定を重ねることになる。
仕事は今と同じだろうか。生活の場所は変わっているだろうか。誰と、どこで、どんなふうに過ごしたいか。そう考え始めると、単純な数字だけでは答えが出ない領域に足を踏み入れていることに気づいた。
親友に『5年後ってどんな生活してたい?』と聞いてみたら、即座に『分からないな。とりあえず今より稼いでる』という答えが返ってきた。それはそれで正直だと思う。でも自分の場合、『稼ぎが増える』だけでは、何を決めることもできない気がしていた。
家計簿で見えた固定費の無駄も、実は『何のために生きているのか』という問いと無関係ではないのかもしれない。なぜなら、今使っていないサービスも、当時は『あると便利かもしれない』という漠然とした期待で登録していたから。つまり、明確な『何のために』がないまま、選択を重ねていたということだ。
夜、カフェで手帳を開いた。5年後、10年後に『こういう時間を過ごしていたい』という場面を、いくつか書き出してみた。友人との食事、本を読む時間、仕事での達成感、家族との関わり...。それぞれに、どのくらいのお金があれば、その時間が守られるのか。
まだ粗い考えだけど、これが『目的地』になるんだろう。そして、その目的地を基準にすれば、今月いくら積み立てるのか、何に投資するのかも、自分で判断する基準が生まれてくるはずだ。
周りが『新NISAで何を買うか』を話題にしている中、自分は『何のために買うのか』を考えている。それって、ずっと後ろからついていくのとは別の道かもしれない。
続きはまもなく
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