小さな引っ越し術

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第3話

二番目の箱

一つ目の箱を片付けた達成感は、二番目の箱の前で早速しぼんだ。

「あ、これは……」

主人公は段ボール箱に貼られたラベルを読み直した。去年の春に書かれた日付。中身は、前の部屋から引っ越すときに詰めたものだ。つまり、ここに来てから一年以上、一度も開けていない。

一つ目の箱とは違う。あれは「保留中」という名目で置かれたものだった。でもこの箱は、単に忘れられていただけかもしれない。

躊躇いながら、テープをはがしていく。中から出てきたのは、季節もの。夏用の薄いクッション、冬に使うひざ掛け、スポーツ用品。一度も使わなかった季節もの、何度も洗濯して使い倒したもの、微妙な状態のもの。

引っ越し見積もりのことを思い出した。この箱も、運ぶのにお金がかかる。でも、季節ものだ。いずれ必要になるんじゃないか。そう思いながら、主人公は一つ一つ確認していく。

すると気づいた。本当に使うものって、形が違うんだ。

何度も使ったひざ掛けは、色が少し褪せていて、生地も柔らかく変わっていた。触ると、それが心地よい。一方、新しいままの薄いクッションは、そのまま段ボール箱に戻してもいいような気がした。

「使うって、痕跡が残るんだ」

呟きながら、仕分けを続ける。本当に必要なものは想外に少なかった。

リビングには今、仕分けた荷物が積み重なっている。まだ二つ目の箱。あと何個あるんだろう。主人公は天井を見上げた。押し入れの奥に、また段ボール箱が見える。あの中には何が入っているのか、もう覚えていない。

午後の日差しが部屋を斜めに照らしている。引っ越しの日まで、あと十日。

続きはまもなく

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