第4話
「完走できない前提」で選ぶ
諦めではなく、むしろ現実的な判断だった。
翌週、同じオンライン講座の比較サイトを眺めていると、新しい視点が浮かぶ。「料金」「時間」「難易度」といった定番の項目だけでなく、「途中で止めたときの返金制度」や「単元ごとに受講できるか」「アーカイブは残るか」といった、失敗を前提にした条件を見始めていた。
先輩の話から1週間。同期の田中さんに声をかけてみた。
「オンライン講座、今何か受けてますか」
田中さんは画面越しに苦笑い。現在進行形で3つ並行しているという。デザイン系、ビジネススキル、それに語学。その中の2つは「たぶん今月中に辞める」と明言した。
「え、それでいいんですか」
「最初はそれなりに真面目に選んだんですよ。クチコミ見て、料金比較して。でも蓋を開けてみたら、イメージと違うことなんて山ほどある。だから今は『試す』つもりで登録してます」
その言葉に、また別の迷いが生まれた。試すというのは、その講座の評価を下すということか。それとも、自分に合っているかを検証することか。講座を「失敗」と呼ぶなら、その基準は誰が決めるのか。
帰宅後、ノートを開いた。
講座選びで大事だと感じていた軸を、改めて書き出してみる。「続けられるか」「力がつくか」「コスパは良いか」。でも先輩の話も、田中さんの話も、その軸の優先順位が人によって、そして時間によって変わることを示していた。
何より、多くの人が「講座を始める前」に完璧な選択をしようとしていて、その重圧で身動きが取れなくなっていないか。
スマホで新しい講座の詳細ページを開いた。内容は悪くない。ただ、今の自分には「必ず完走する」という覚悟がない。
それでも登録ボタンに指が向かった。
続きはまもなく
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