第3話
先輩の「続かなかった話」
翌日、昼休みに先輩の席に向かった。
「あ、いい時間に。何か相談?」と先輩。
「最近、何か新しく始めたことってありますか。講座とか、習い事とか」
先輩は少し笑いながら、机の引き出しを開けた。中には、まだ半分ページが残った教材が入っていた。
「これ、去年始めた語学講座。3ヶ月コースだったんだけど、2ヶ月目で止めた」
そこから先輩の話が続いた。理由は単純だった。朝6時からのオンライン授業は、仕事が忙しい時期に当たったこと。テキストは分かりやすかったが、進度が自分のペースと合わなかったこと。何より、講座を続けることそのものが目的になっていて、「何のために習ってるのか分からなくなった」らしい。
「でもその失敗があったから、今やってることは違う選び方してる」と先輩は付け加えた。
「何をしてるんですか」
「あえて講座は取らなかった。YouTubeとか、本とか、散らばった情報を自分のペースで拾ってる。結果的に、そっちの方が続いてる」
帰り道、頭の中がざわついていた。正解がないんだ。同じ講座が、ある人には最高で、別の人には続かない。選ぶときの「重視する点」も、選んだ後に変わることもある。
スマホを開いて、また比較サイトを見始めた。でも今度は違う角度で見ていた。
講座の詳細じゃなく、「これなら2ヶ月で止めてもいいか」を考えていた。完走できない自分を前提に、選び始めていた。それは諦めじゃなくて、むしろ現実的な選択に思えた。
タブをいくつか開いたままにしておく。焦って決めない。むしろ、この迷いと向き合う時間こそが、本当の学び選びなのかもしれない。
そう気づいたとき、初めてスマホを閉じることができた。
続きはまもなく
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