仮置きの法則

1/1

第1話

第一話 段ボール侵略

引っ越しから三ヶ月。玄関を見ると、まだダンボール箱が五個積まれたままだった。

「あれ、まだあるんだ」と朝、出かける前に気づく。でも出勤時間は迫っている。「帰ったら片付けよう」と心の中で呟いて、そのまま家を出た。

これが日常になっていた。

帰宅後は疲れてシャワーを浴びて、ご飯を食べて。片付けは明日にしよう、土日にやろう。そう思っているうちに、ダンボール箱は玄関の定位置になった。来客があると「これ、まだ片付けてなくて」と言い訳する。相手も「あ、大変ですね」と生温い返事をして、誰も何も言わなくなった。

同じように、廊下には搬入時に運んだままの家具がある。本当は寝室に入れるはずだった棚。リビング用だと思ってた椅子。その辺りに置いてから、もう動いていない。

友人が遊びに来た時に言った。「いつまで引っ越し状態なの」と。その時、ハッとした。自分は引っ越し中だと思っていたのに、もう三ヶ月も経っていた。これは引っ越し状態ではなく、新しい生活なのかもしれない。

ただ、片付けようとしても、何をどこに置くか迷ってしまう。新しい部屋のレイアウトがまだ定まっていないのだ。だから、仮置きのまま。本当は仮じゃなくて、もう永遠に仮置きなんじゃないか。そんな疑念が頭をよぎる。

今夜も、ダンボール箱を見つめながら考える。明日こそ片付けよう。でも、その言葉ももう何度目だろう。

続きはまもなく

目次

コメント