第1話
第一話 目覚まし時計の後で
いつもの朝。スマートフォンの目覚まし音が鳴ってから、ベッドから出るまで平均15分。そのあいだに流れるのは、SNSのタイムライン。寝坊した日のあわただしさ、出勤途中の後悔。この繰り返しが3年続いていた。
土曜日の昼下がり、何気なく開いたSNSに目が止まった。「朝の5分が人生を変える」というポストだ。派手な主張ではなく、誰かの日記のような呟きだった。その人は毎朝、ベッドから出たらカーテンを開けて、白湯を飲むだけ。たったそれだけを3ヶ月続けたという。
読んだあとも、すぐには動かなかった。自分はこれまで何度も「明日から頑張ろう」と思ってきたから。朝ヨガ、瞑想、読書、運動。SNSで見かけるキラキラした朝の習慣に何度も挑戦した。だが1週間も持たない。完璧にできない自分を責め、その罪悪感でベッドに沈む。そんな悪循環だ。
でも、このポストは違う感じがした。「完璧を目指すな」という後半の文章が心に残った。
月曜日の朝。試しにやってみることにした。目覚まし音の直後、いつもより2分早くベッドを出る。カーテンを開けて、ついでに白湯を作る。それだけ。洗顔も朝食も、いつものペースだ。
なぜか、その日の仕事は少し楽だった。朝の準備が焦らしくなかったからかもしれない。
火曜日も、水曜日も同じことを繰り返した。小さすぎて、失敗しようがない。5分という枠は、逃げ込むほど小さくもなく、遠すぎるほど大きくもない。そんな妙な安心感があった。
1週間後、ふと気づいた。朝起きるのが、少し楽になっていた気がする。
続きはまもなく
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