山靴が語ること

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第3話

判断基準の重み

山行の準備は思いのほか複雑だった。靴を手に入れた後、ザック、レイン対策、行動食。店員や先輩登山者の言葉を頼りに、次々と装備を揃えていく。だが選ぶたびに、同じ疑問が湧き上がった。なぜこれなのか。本当にこれでいいのか。

ネット上の装備リストを見ると、同じ山へ登る人でも選んでいるものが違う。高級品を揃えた人もいれば、最小限に抑えた人もいる。どちらが正解なのか、判断がつかない。

焦燥感を感じながら、靴を買った店に戻ってみた。違う店員が対応してくれたが、先日のやりとりについて聞くと、彼は静かに頷いた。

「装備選びで悩むのは、実は良い兆候なんです。最初から確信を持って選べる人より、考え込む人の方が、後々の経験を積み重ねやすい」

「それはなぜですか」と僕は聞いた。

「判断基準を持つ人は、失敗からも学べるからです。『この靴は自分の足には合わなかった』『この行動食は想定より重かった』。そういう小さな経験が、次の選択を変えていく。その積み重ねが、本当の装備選びの力になるんです」

その言葉を聞きながら、中年男性の靴の話と、最初の店員の言葉が、同じ方向を指していることに気づいた。装備を選ぶことは、自分がどんな登山者でありたいのかを問う作業なのだ。

出発まで、あと二週間。靴を履いて近所の坂道を何度も歩いた。足の感覚は少しずつ変わっていく。同時に、山へ向かう自分の姿勢も、微かに形を成し始めていた。

続きはまもなく

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