第3話
完了という幻想
領収書を眺めていると、母からのLINEが鳴った。「スクール、決めたの?」と聞かれて、返信に詰まった。
実は、その日の午後、高額スクールの説明会に参加していた。オンライン面談で、講師は僕の不安を丁寧に拾ってくれた。「独学だと挫折率が高いんです。僕たちはそこをサポートします」。その言葉は心地よかった。同時に、その心地よさが自分を疑わせた。
夜、大学の図書館に行った。コンピュータサイエンスの本が並ぶ棚で、何冊か手にとってみる。Pythonの基礎、アルゴリズム、データ構造。どれも三千円前後だ。書籍ならば、「完了」という概念がない。読み終わっても、それは始まりに過ぎない。YouTubeもUdemyも高額スクールも、同じはずなのに、なぜ講座には「修了」という終わりが用意されているのだろう。
先輩の鈴木に会った。彼は大学の授業だけでエンジニアになった。「正直、講座は効率的だと思う。でも何を選ぶかより、選んだ後に何をするかが全部だよ」と言った。
帰宅して、机に積まれた領収書を見直した。完了していない講座は、失敗ではなく、「試行錯誤の記録」なのではないか。そう考えると、次の選択肢も見えてくるようだった。
続きはまもなく
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