味付けの記憶

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第7話

小さな変化に気づく

実家から帰った翌日。いつもの台所で、いつもの調理をしていた。けれど何かが違っていた。

人参を切る時、その断面の色を見ていた。玉ねぎを炒める音を、これまでより丁寧に聞いていた。塩の量を計る手が、少し迷いを持っていた。

母の言葉が、ずっと頭の片隅にあった。毎日同じことをしていると、時々、あ、今日はいつもと違うな、って気づくことがある。その小さなことが、面白い。

自分はこれまで、毎日の食事を「こなす」ものだと思っていたのかもしれない。習慣になることで、思考を省エネできるものだと。でも実際には、毎日同じように見える営みの中に、その日その日の差分があるのだ。それに気づくか気づかないか。その違いだけなのだ。

鍋の中の具材が、昨日のそれと少し違う色をしている。火の通り方も、この季節特有の湿度の影響を受けているのだろう。そう考えると、マンネリだと感じていた毎日が、実は何度も同じことを繰り返しているのではなく、毎回、新しい出会いだったのではないか。

誰と食べるのか。その問いが浮かんだのは、そのためなのだと理解できた。食べ物の小さな変化は、一緒にそれを味わう相手がいてこそ、意味を持つのだ。

スマートフォンを手に取った。週末、友人を食事に誘おうか。それとも、もう一度母に電話してみようか。そんなことを考えながら、調理をつづけた。

今夜の食卓に何を並べるのか。それは次の問題だ。だがもう、それは退屈な選択肢ではなくなっていた。

続きはまもなく

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